歯を白くして、印象を良くしたい。
芸能人のような白さがほしい。
「芸能人は歯が命」なんてCMありましたよね?(今の若い子は知らんか。)
今回は歯科で行うホワイトニングのブリーチング(漂白)についてお話しします。
「ホワイトニングは痛みが出るっていうよね?」
「危険性はあるの?」
「歯にダメージがあるのは怖い。」
そういう患者さんも多くいらっしゃいます。
私は歯科衛生士として12年働いていますが、ホワイトニングについて詳しくありませんでした。
「ホワイトニングは歯の表面を傷つけて白くするんじゃないか。」
「しみやすくなって、後戻りもする処置なんてお勧めしたくない。」
そんな歯科医師や歯科衛生士もいると思います。
歯の専門家がその考えなので、患者さんも不安ですよね。
今回、たくさんの文献や論文を読んで、一般的なホワイトニングに使われている主な成分は過酸化水素ということがわかりました。
その過酸化水素の漂白効果によって、歯が白くなるそうです。
その漂白時の反応が刺激となり、痛みが出るとありました。
歯科関係の方やホワイトニング専門のクリニックの方で、何か間違っていることがあればコメントいただければ幸いです。
目次
ホワイトニングで歯が白くなる理由
ホワイトニングの薬剤でなぜ歯が白くなるのでしょう。
ホワイトニングで歯を白くする主成分は、過酸化水素水です。
以前「オキシ漬け」という薬を浴槽に色々なものと一緒にぶち込んで洗う洗浄方法が流行りましたよね。
ほぼ同じような現象で、酸素系の薬液をつけることで、化学反応が起き、有機質(タンパク質)汚れを分解し、落としていきます。

ここで、少し歯に詳しい方なら疑問に事が出てきます。

エナメル質って90%以上硬い無機質(ハイドロキシアパタイト)だよね?
ホワイトニングで歯がどんどん白くなるのはなんで?
それは、歯の構造が関係しています。
歯の1番表面にあるのは半透明のエナメル質です。
それをもっと細かく顕微鏡で見るとエナメル小柱が規則正しく並んでいます。綺麗なガラスのようです。
その隙間を埋めるようにエナメル小柱間質があります。

そのエナメル小柱間質は、エナメルたんぱく質という成分でできています。
エナメル質の下にあるのは象牙質。
ホワイトニングに使用する過酸化水素が、エナメル小柱間質のエナメルたんぱく質の有機質の色を分解しながら、中の象牙質まで浸透します。

象牙質は字のごとく、象の牙の色をしています。
(あまりまじまじ見たことはありませんが、結構濃い黄色ですよね??)
象牙質は無機質(ハイドロキシアパタイト)70%・有機質30%ぐらいでできています。
加齢とともに黄色が濃くなる部分でもあるので、象牙質の漂白できれば歯が白くなるという事です。

何のこっちゃと思われているかたは、歯の中にある象牙質が黄色の原因で、
それが白くなったら歯が白く見えると思ってください。
次は、ホワイトニングに使われる過酸化水素の危険性についてお話しします。
過酸化水素の危険性
ホワイトニングをすると、痛みが出たり歯がしみるようになる。
そんな不安をお持ちの方は多いと思います。
先ほど申した通り、歯科で扱うホワイトニング剤の主成分は過酸化水素です。
これから過酸化水素について勉強しましょう。
- 漂白効果がある
- 弱酸性
- 消毒や高濃度であれば滅菌も可能
- 傷口に使うと、カタラーゼという消化酵素の働きで泡が発生し、その力で消毒できる
- 分解されると、酸素と水になる
- 6%以上の濃度が高い過酸化水素は劇物として扱われる
- 水で2.5~3.5%に薄めたものはオキシドール®︎・オキシフル®︎として発売されている(消毒液)
- 熱と光で分解が始まる
- 分解反応で発熱を伴う(搬送時や保存するときは要冷蔵)
- ロケット燃料にも使われる
- 安定剤として、りんやアンモニアなどが使われる
高濃度の過酸化水素の危険性
- 強い腐食性をもつ(眼など危険)
- 肌に触れると火傷。白斑ができる
- 飲み込むと有毒
- 呼吸器系に害が出る
- 可燃物に混ぜると発火の可能性もある
- 弱酸性であれば安定しているが、中性からアルカリ性になると不安定になり爆発の可能性あり
- 高温で保存すると分解反応で爆発の可能性がある
- 不純物(重金属・アルカリ・可燃性有機物)が混ざると非常に不安定になり、場合によれば火災や爆発

なんかめっちゃ怖いやつ歯に塗るやん!!!って思いました。
普段、オキシドールという低濃度の過酸化水素水を使用している私からすれば驚くべき事実。
そして今後も取り扱いに気をつけたいと思います。
この記事を読んだ方はこれから歯科での治療は目をつぶって受けてください。(目に入ったら怖い。)
こんな劇薬、歯につけていいの?と思いますが、歯科医院で扱うホワイトニング剤は厚生労働省から認可のおりた薬剤です。
さらに、エナメル質はほぼ無機質でできているので、健康なエナメル質になら問題ないかと考えられます。
(可燃性じゃないので、燃えたり爆発はないですね。)
しかし、歯の痛みが出る原因は、象牙質への浸透圧や分解熱が原因です。
薄いエナメル質の人や、普段歯磨きでゴシゴシ擦っている人は痛みが出やすいと思います。
(先ほど比較的年齢の若い方と言ったのは、歯磨きの回数が増えれば、その分エナメル質もすり減ってくるからです。)
ホワイトニングの過酸化水素濃度
高濃度の過酸化水素に注意が必要とわかりました。
では、ホワイトニング剤に使われている過酸化水素濃度はどれぐらいでしょうか。
メーカーによってまちまちなのですが、35%〜3%まで幅広くありました。
高濃度の方がホワイトニング効果は高くなりますが、漂白の浸透による刺激が強いので痛みが出やすいそうです。
さらに35%ぐらいの濃度になると、皮膚が触ると火傷をしたような痛みに襲われます。
歯は大丈夫でも、その近くには歯茎があるので、歯肉保護剤を塗ってカバーします。

ここまで高濃度の薬剤は痛みなどのリスクがあるので、
ホワイトニングに慣れている審美専門の医院に行かれた方がいいと思います。
10パーセント未満になれば刺激は減りますが、その分同じ時間処置してもホワイトニング効果は減ってしまいます。
\刺激が少ないポリリン酸ホワイトニングについても調べた記事はこちらからどうぞ/

他にも光触媒を入れることによって、過酸化水素の反応を促進させ、比較的低濃度の23%で効果が出る薬剤もあり、一言でホワイトニングと言っても様々です。
ホワイトニングができない人、しないほうがいい人
以上の過酸化水素の危険性を踏まえた上で、ホワイトニング(漂白)に注意が必要な人をまとめます。
- 知覚過敏が自覚症状としてある人
- 象牙質が出てきている人
- 無カタラーゼ症の人
- かぶせや虫歯の治療が多い人
- 妊娠中・授乳期中の人
- こども
- テトラサイクリン系の抗生剤の影響を受けて、歯に着色がある人
①・②知覚過敏や歯がすり減って咬耗や摩耗している歯は、象牙質に直接過酸化水素のタンパク質の分解時の刺激が伝わってしまうので、痛みをより感じやすいです。
痛みの刺激は、象牙質の象牙細管という管を通って、中の神経に伝わります。
過酸化水素が浸透していく刺激がダイレクトに伝わってしまい余計に痛みがひどくなることもあります。
③無カタラーゼ症とは、過酸化水素を分解する酵素(カタラーゼ)がないために、少量の過酸化水素でも有毒性が出てしまいます。
顎骨壊死などの症状もあるので、注意が必要です。
④かぶせものや虫歯の治療跡が多い人は、歯以外の材質はホワイトニング薬剤では白くならないので、勧められません。(ベニアや自費のかぶせものをお勧めます。)
⑤・⑥妊娠中や授乳期の方、子どもには刺激が強いのでお勧めしません。
⑦テトラサイクリン系の抗生剤を0歳から12歳ごろまで大量に服用していると、歯がグレーになったり、少し模様がある見た目になります。(昭和40年代の方に多いらしいです)
テトラサイクリン系で歯の白さを求める方は、ホワイトニングの処置をしても色の変化が見えづらいので、時間と期間がかかると思っておきましょう。
まとめ
ホワイトニングは過酸化水素の力で漂白していることがわかりました。
そして、痛みの原因は過酸化水素が漂白するために象牙質へ浸透した時の刺激や、分解反応が原因と考えられます。
しみる痛みが心配な方は、低濃度の過酸化水素でホームホワイトニングをするか、
表面の着色汚れを取るだけでも歯の色は白くなるので、お近くの歯医者で相談されてもいいかもしれません。